5/3 一部平家⑪

5月3日に目白庭園の赤鳥庵にて、平家詞曲研究所の鈴木まどか先生主催による一部平家が開催され、

乙亥会も参加させて頂きました。

まどか先生による解説と後記を掲載させて頂きます。

 

 

一部平家×乙亥会社中


去る、5月3日(火・祝)の朝、目白庭園赤鳥庵にて「一部平家11」を開催しました。


平家物語の一部始終を平家琵琶(平曲)で語り通すことを「一部平家」と言います。
私は昨年より、年8回×10年間の計画で「一部平家」に取り組んでおり、
当日は「康頼祝詞」と「足摺」を語りました。

 

鹿ケ谷事件ののち、鬼界ケ島(現在の硫黄島)に流された3人のうち、
康頼と成経は熊野に似た地形を探し、「熊野詣」をして、祝詞を読み上げます。
これが「康頼祝詞(やすよりのっと)」です。


目白庭園には池や滝があります。
そこで、滝を「那智の滝」、会場を本宮、表門を新宮、東屋を発心門王子に見立てて、
配布プリントに地図を示してみました。
康頼たちの「疑似熊野詣」の疑似体験です。

いつもお世話になっている乙亥会社中にご協力いただけることになったので、
呈茶は「卒都婆流(そとばながし)」をテーマに、宗景先生と案を練りました。


康頼と成経が夜どおし「熊野詣」をするうちに夢を見ます。
女性たちが鼓を打ち今様を唄う夢と、和歌を示したナギの葉が風で届く夢です。
この今様や和歌をヒントに、康頼たちは和歌を刻んだ木片を海に流すようになる、
というのが「卒都婆流」です。


そこで、和室と庭園との間にある広い廊下に緋毛氈を敷き、船に見立てました。
丸い盆を「鼓」に見立て、
茶杓は鬼界ケ島から切り取ってきたような、螺旋状の蔓を削ったもの。
弁天様にちなんだ茶碗、岩田川の沢辺にいそうな蟹を描いた茶入れ。
抹茶はナギの葉を運んだ風のイメージで、小山園「松風」。
お菓子は今様の「花咲き実就る」から、高岡の不破福寿堂「花咲(はなえみ)」。
床にはナギの枝と葉を、宗全籠にたっぷりと。
呈茶スタッフと私は、葵祭の行列の方々みたいに、ナギの葉を胸にあしらいました。
私のすぐ後ろに宗全籠がありましたので、同化したような光景だったかと思います。
点前のBGMとして、女性たちが唄った今様と、ナギの葉にあった和歌を語りました。
懐紙には、今様と和歌を記したコピー用紙を挟んで台紙にしましたので、
ご参会の皆様は文言が聞き取れたのではないかと思います。

お菓子とお茶を召し上がった方は、庭園を眺めて「熊野詣」をシミュレーションしたり、
この日の朝から庭園の池を泳ぎ始めたカルガモの雛を数えたり。

 

さて、次に語るのは「足摺」です。
出家していたにもかかわらず信心の浅かった俊寛だけが、
中宮(徳子)御懐妊の恩赦に漏れて、取り残されます。
史実では俊寛は亡くなっていたようですが、
ここは物語どおりに受け止めて、登場人物の心境を想像するのが面白いです。
語っている合間に、呈茶の後片付けもすませて下さったようです。


しめくくりに、「桜」の中音を、26名のご参会の皆様と唱和しました。
ナギの枝も少しずつお持ち帰りいただきました。


乙亥会社中の皆さん、助っ人に入って下さったHiSUiの皆さん、
それからナギの枝をたくさん提供して下さった渋谷さん、
ご協力ありがとうございました。
御礼申し上げます。