5/28  花寄~雲海によせて~

床 逢花打花



志野のお勉強、最終回は、

鈴木富雄「耀う志野」を扱いました。


写真の床の間で、花入れの前にある大ぶりの茶盌は、数年前に偶然通りかかった個展で

私が一目惚れし、求めたものです。


ずっと名前がありませんでしたが、今回

「雲海」と名付けました。


同先生作の花入れと湯呑を使い、渋谷さんから今回も沢山の花を頂戴して、花寄せを行いました。


今回は平家詞曲研究室の鈴木まどか先生にもご参加頂きました。

そして、まどか先生の視点で花寄を文章にして頂きましたので

有難く下に掲載させて頂きます。



いつも「平家琵琶茶会」や、平曲演奏会の呈茶でお世話になっている

乙亥会社中のお稽古に、お打ち合わせを兼ねてお邪魔しました。

茶室に入ると、さまざまな花入れが13も並んでいます。

今日は「花寄せ」のお稽古とのことで、私も加わることになりました。

乙亥会の皆さんは、今月は志野茶碗について勉強中なので、

耀(かが)よう志野「雲海」という茶碗を念頭に、色とりどりの花を入れて行きます。

1番目と7番目と13番目の花入れは決まっており、前の人が入れた花を受けて、

次の人が「雲海」のイメージをさらに考えて花を入れます。

順番はくじ引きで決め、私は2番目と12番目を仰せつかりました。

床の間には、すでに「逢花打花」の軸が掛けられています。

花のあるがままの姿を、あるいは既に床の間にあるお花を受け入れなさい、と言われているような、

花寄せに相応しい禅語です。

1番目の宇井さんは、志野焼の大きな花入れに、タイサンボクの花を堂々と入れました。

タイサンボクは柑橘系のほのかな香りがするのですね。

高いところに咲く花なので、見上げるばかりで、花の香りまでは知りませんでした。

さて、早速に順番が巡って来ました。

静かで洋々とした「雲海」が始まったばかりですが、ふと、花入れの説明のときに

「この掛花入は箙のイメージで」という話があったことを思い出しました。

そう、きっと「雲海」も、細部では違う表情があるはず。
折しも、源頼政が大小の鏑矢で鵺退治をした時期でもあるので、

大小の矢を箙に差すつもりで、赤い花と白い花を矢のように入れました。

私が端にある掛花入を使ったせいでしょうか、皆さん、端から順に花入れを使って行きます。

雲の海は水面と違って凸凹しています。

狙っていた花や花入れが別の人に使われてしまったり、隣のお花とのバランスに気を遣ったり、

皆さん四苦八苦されていましたが、床の間はだんだん雲の海に覆い尽くされてきました。

いよいよ12番目。私に遺されたのは小さな宗全籠です。

ナンテンもホタルブクロもヤマゴボウも、もう使われています。

13番目の花入れのことも考え、思い切って、宗全籠から溢れるようなガクアジサイを入れました。

13番目の律子さんが、小さな志野焼に品よく小花を入れて、

床の間には見事に「雲海」が完成しました。

茶室は「雲居」に移動したかのようで、

そこにいる私たちはさしづめ「殿上人」といったところでしょう
か。

こんな気持ちになれたのは、皆さんがお花のこと、花入れのこと、

前の人のこと、次の人のこと、床の間全体のことを考えて、

あるべきところに花を入れたからなのですね。

きれいなお花に囲まれて、ドキドキしながら、深いお勉強をさせていただきました。

ありがとうございました。

まどか先生は平家琵琶の語り手で芸術的な感性をお持ちでありながら

日々平曲のご研究をされているので

日本史に大変詳しく、理系の知識もお持ちなので

いつも論理的に、茶道や平曲のこと等を教えて下さいます。


今回の花寄でも、先生が箙に花をすっと入れられた瞬間

「箙そのもの!」と感動したのですが

頼政のイメージとは。

大変勉強になりました。



因みに、2枚目の写真は1枚目と間違え探しのようですが、

お稽古の後に3歳の娘があれこれ入れ直したものです。

沢山の花に囲まれると、誰でも楽しく幸せな気持ちになりますね。