1/29_31 | 絶対値 |

床 日々是好日

花 黒侘助

花入 箙

 

 

無一物。

 

 

「長次郎を見るならこの一盌」

と言われている程、長次郎の茶盌の代表とも言えるのが

「無一物」です。

 

生まれたばかりの赤ちゃんは何も持っていません。

そして死ぬ時も何も持ってはいきません。

本来、事物は全て空なのですから、執着すべきものも何もないのです。

それが「本来無一物」です。

 

その禅語が銘となっている「無一物」。

赤樂といっても、その膚はかせており、土そのもののような色味です。

箆で丹念にそぎ落とされた姿には

少しの誇張や遊びも一切なく、

まるで深い森の、土の中から生まれてきたままのようにも見えます。

 

この、究極にノイズを排除した、素直な存在。

「名碗を観る」の中で林家晴生先生はこれを「絶対値」という言葉で表現されています。

 

利休の茶が完成した瞬間を、この一盌に見て取ることが出来ます。

 

 

お稽古ではこの他に長次郎七首の一つである「東陽坊」も学びました。

 

コメント: 0 (ディスカッションは終了しました。)
    まだコメントはありません。