床 悠然見南山
花 母子草 肥後草 風露草 矢車草 勿忘草
花入 風の庭籠
香盒 空豆型 壺々蒔絵
今回の花はどれも道端に生えているような野の花ばかりです。
母の日が近いので、母子草を主役に入れてみました。
七草粥ではごぎょうと呼ばれていますね。
普段は雑草と言われてしまう草花であっても
きちんと目を向け
敬意をもって接すると
はっとするほど美しい表情を見せてくれます。
「名もない花には名前をつけましょう~」
などという歌が数年前にはありましたが
名もない花などありません。
雑草という名の草もありません。
興味を持つこと。
調べてみると風流な名前がついていたり
住んでいる地域に特有の種であったり
実は漢方で珍重されている等
様々な事実を知ることが出来ます。
草花に限ったことではありませんが
相手を知ろうとする姿勢が
より一層の思いやり、大切に扱おうという気持ちを生むのではないでしょうか。
少し偉ぶった話をしてしまいましたので
ここで気分を変えて、
床の禅語にまつわる、
夏目漱石の草枕の一節を引用しようと思います。
苦しんだり、怒ったり、騒いだり、
泣いたりは人の世につきものだ。
~余が欲する詩はそんな世間的な人情を鼓舞するものではない。
俗念を放棄して、
しばらくでも塵界を離れた心持になれる詩である。
~西洋の詩歌はどこまでも愛だとか、正義だとか、自由だとか、
~いくら詩的になっても地面の上を駈けあるいて、
銭の勘定を忘れるひまがない。
うれしい事に東洋の詩歌はそこを解脱したのがある。
采菊東籬下、悠然見南山。
只それぎりのうちに暑苦しい世の中を
丸で忘れた光景が出てくる。
垣の向こうに隣の娘が覗いてる訳でもなければ、
南山に親友が奉職している次第でもない。
超然と出世間的に利害損得の汗を流し去った心持になれる。~
足の元に咲いている小さな花に微笑んだ後は
只々何も考えずに遠くの山を見やるのもいいですね。
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