10/9 母と子の茶会

妊婦さんや母親、赤ちゃんの為に様々な講座を開かれている

横浜の「いのち・こころ・からだ・くらしの学び合いの場~Umiのいえ~」にて、

畳替えのチャリティ企画として

「親子でお抹茶を楽しむ会」

を開催致しました。

 

いつもは食育講座やトリートメントセラピー等が行われているお部屋を

お茶室へと一日模様替えさせて頂きました。

 

貝の粉で出来ているという、白く美しい壁のお蔭で
掛物がとても映えました。

 

 

 

床 風とゆききし雲からエネルギーをとれ

 

宮沢賢治のことばです。

子ども達が、風を肌に受け、大地から、

宇宙から力をもらって

大きく、逞しく育っていって欲しい。

その願いから、この詞を選びました。

 

 

 

花 撫子 大文字草 千日子坊

 

ナデシコは、文字通り「撫でる子」と書きます。

子を撫でるように可愛い花なので撫子。

全ての母親の気持ちを代弁する花として

また、思わずなでなでしたくなる、可愛い子達に沢山会えるだろうと期待を込めて

この花を真っ先に選びました。

 

 


香盒 柘榴 㐂山

 

今回、お茶会のお話を頂いて最初に決めたお道具です。

 

柘榴の香合は先日のお稽古でも使ったもので、

こちらの記事「grenade」にも詳しく解説しましたが、

会記に書いたものを再度載せておきます。

 

お産や子供の守り神、鬼子母神は

その手に柘榴を持っています

柘榴は一つの実の中に沢山の種子が存在することから

縁起の良い果物として

世界各地で親しまれています

 

安産と子育ての仏様、鬼子母神。

子孫繁栄や豊穣の意味を持つ柘榴。

 

出産、子育ての支援活動をされている斉藤麻紀子さんが代表を務められるUmiのいえには

柘榴はこれ以上ないモチーフであると確信致しました。

自然と、後ろのカーテンとも調和しているように思います。 

 

 

 

 

茶杓 銘「黎明」

 

この茶杓は、随分と昔から所有していたのですが、

名前を付けていませんでした。

写真では分かり辛いのですが

節下の中央左側に、黒い点があるのが特徴的です。

 

茶会に向けてお道具を選んでいたある時、

この点を中心にしばらく眺めていますと、何やらこの茶杓が

妊娠が分かってすぐ産婦人科を受診した時にもらう

超音波写真のように見えたのです。

茶杓は母親の胎内、黒い点は、胎嚢です。

銘は、それに因んだものにしようと思いました。

 

ただ、茶杓の銘が「胎嚢」ではあまりにむき出しですし

地中でこれから芽を出さんとする種子のようにも見えます。

 

そこで

あたらしいものが始まる、

ここから明るくなる、物事の起こり

という意味で

 

「黎明」

と名付けました。

 

今回、母と子のお茶会で初使いさせて頂いたことで

ずっと眠っていたこの茶杓も新たにスタートを切ることが出来ました。

大切に育てていきます。

 

 

 

菓子 芋ようかん 澤村美保作

 

今回のお菓子は、小さなお子様にも召し上がって頂きたいという狙いがあったことから

Umiのいえで食育講座を担当されている澤村先生に特別に作って頂きました。

 

甘味の添加を極限まで抑え、自然のお芋の甘味を存分に引き出した羊羹。

表面は桑茶で上品な景色が描かれています。

 

とても素朴な甘さで、それでいて高級感のある滑らかな舌触りに

離乳食の赤ちゃんからお孫さんのいるお客様まで皆様とっても喜ばれていました。

 

昔から、「和菓子の甘さは干し柿を超えてはならない」と言われているくらいですから

砂糖に頼らずに自然の持つ甘味を味わうことは大切ですね。

特に、あんこを使ったような生菓子と呼ばれる和菓子は

本来濃茶の時に出されるものですから

今回のように薄茶をお出しする時は、作って頂いた芋羊羹の甘味があるべき姿と言えるかもしれません。

 

素敵なお菓子を作って頂いて本当に有り難うございました。

 

 

 

茶盌 母子馬 桃太郎 他

大人のお茶盌は、色々な動物が描かれたものを使いました。

馬に、桃太郎の犬、兎に猪…

それぞれ干支の年に購入したものでしたが

たまたま同い年のお客様に当たられたことが何度かありました。

自分や、家族の干支というものは、特別な思いが致しますね。

 

動物のお茶碗は

初めての空間で親子共に緊張されている場合もあるかもしれないので

親子で一緒に見て楽しめるようにと選びましたが

実際にお茶席で

「あ、うさぎさんがいるよ、ぴょんぴょん」

「♪もーもたろさん、ももたろさん♪」

とあちこちに会話の花が咲いているのを見ると

飛び上りたいほど嬉しくなりました。

 

お子様用には、大人のお茶盌より一回り小さいものを用意しました。

大人よりも少し薄めに点ててお出ししましたが

2歳に満たない子から、皆さんゴクゴクと飲まれていました。

「お抹茶は苦い」という先入観を持つ前の方が、案外すんなりと飲めてしまうのかもしれません。

ちっちゃなお客様からはにかみながらの「おいしい」の一言にスタッフ一同癒されておりました。

 

お母様達からも美味しいと喜んで頂けて

中には「泣きそう」とおっしゃる方まで。

学生時代の京都旅行を思い出したと言われていました。

 

日々育児、家事に追われて忙しい毎日を送るお母様達に

ほんの束の間でもほっとできる空間を作りたい

その一心でこの茶会を企画しましたので

お茶の味を純粋に楽しんで頂けたのであればこれ以上の喜びはありません。

 

 

Umiのいえは私自身、出産後に何度も利用させて頂いていますが

温かく、愛の溢れる空間です。

今回はそれに相応しい茶席をと思い、母や社中の皆様に助けを借りながら準備してきました。

 

乳幼児の親子をメインのお客様としたお茶会というのは、

中々類を見ない企画であったと思います。

 

女性ばかりの茶席で、赤ちゃんの泣き声が聞こえたり、幸せそうな授乳姿が見られたり。

(時には私の娘がお客様の後ろで寝ていたり…)

 

格式の高いお茶会では憚られることも、眉をひそめられることは全くありません。

それくらい自由にして頂いても、不思議なもので

自然と大人も子供も声がひそひそになって

部屋の全員が協力してお茶席の空気を作り上げていました。

 

今までどのお茶会でも経験することのなかった

母性と生命力の温かさに満ち溢れた会になったように思います。

 

お孫さんのいる世代の乙亥会のスタッフの皆さんも

沢山の赤ちゃんを抱っこしたり、お子さんと触れ合えて

とっても楽しかった、全員可愛くて仕方がなかったと

喜ばれていました。

赤ちゃん、子供の存在は明かりそのものですね。

 

麻紀さんには打ち合わせの段階から

色々と我儘ばかりでご迷惑をおかけしました。

無理な注文も笑顔で引き受けて下さって

私たちの昼食のお部屋を用意して下さったりと

沢山お気遣い頂きました。

 

いつも愛情を持って接して下さる麻紀さんにお返しがしたいと常々思っていましたが

喜んで頂けたようで本当に嬉しいです。

 

 

また、当日は今年3月に亡くなられた小林宗離さんの姪御さんも来て下さって

ようやく念願の、お茶を差し上げることが出来ました。

 

Umiのいえスタッフの皆様や、趣味で仲良くさせて頂いてる方、

子育てを頑張るお母様達と、未来を担う子どもたち。

大切なお客様を沢山お迎えすることができて幸せです。

 

 

とても貴重な経験になりました。

宇井さん、旦那様、森さん、梶田さん、谷さん

皆様、心より有り難うございました。