呼子鳥とは何か。
呼子鳥が歌に詠まれるようになったのは万葉集からです。
万葉集で呼子鳥が詠まれた歌は9首。
万葉学者の伊藤博氏によると、
「万葉では晩春に子(妻)を呼び求めて鳴く鳥とされているけれども、いかなる鳥とも知られない。普通、郭公とか言われているが、山口爽郎『万葉集の鳥』には、托卵して子を呼び続けるホトトギス科の四種の鳥(カッコウ・ツツドリ・ホトトギス・ジュウイチ)をいうとしている」(万葉集釈注)
としています。
先ほどの記事の続きのようですが、やはり日本人はホトトギスの鳴き声が好きなのですね。
また、山陰地方では山彦のことを呼子鳥と言うそうです。
鵺など、空想上の生き物であるという説も。
このように呼子鳥が正体不明であることから、
むつかしや猿にしておけ呼子鳥(宝井其角)
大かたは猿にしておけ呼子鳥(高天鶯)
猿ならば猿にしておけ呼子鳥(市川白猿)
などという俳句も後世に作られているほどです。
さて、この呼子鳥、茶道の世界では上に挙げたどれでもなく、
鹿の声として知られています。
何故ここにきて突如鹿が出てくるのかは不明ですが。
今回はその鹿がうずくまる姿を表した松江の銘菓「呼子鳥」に挑戦してみました。
ご近所から頂いた栗を栗餡にし、漉し餡を練り切りにしたもので包みました。
本来は外側は小豆の皮を剥いて炊いた、「皮むき餡」が用いられています。
それを使うことで淡い古代紫の色合いと、栗餡の透け具合が相まって鹿に見えるのだとか。
普通の漉し餡でそれを再現しようとしてもなかなか上手くいきませんでした。
素人が銘菓を簡単に再現できる訳もないのですが。
本家は背中に紅葉の焼き印があるのですが、
寒天を2色に染め、その代わりとしました。
それにしても栗餡と小豆は本当に相性が良いですね。
見た目はあんこ玉のような、素朴すぎるものになってしまいましたが、
味覚から少しでも秋を感じて頂けたら幸いです。
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